元神鋼ラグビー部の林さん 英で“殿堂”入り
神戸新聞 2002年(平成14年)2月17日付朝刊より
実績と「人間味」高い評価


写真提供:林 敏之
 ラグビー元日本代表で、神戸製鋼の7年連続日本一に貢献した林敏之さん(42)=神戸市至難区高尾通=が、英国オックスフォード大の歴代ベスト15(フィフティーン)に選ばれた。オ大はラグビー発祥の地である英国屈指の名門校。林さんは、英国以外から唯一の選出。名選手にまた一つ、大きな勲章が加わった。      

(坂本 勝)

 林さんは徳島市生まれで、同志社大を経て神戸製鋼へ。ポジションはロック。白いヘッドキャップと口ひげをトレードマークに「壊し屋」の異名をとった。「マル」の愛称でも親しまれた。国の代表が戦うテストマッチ出場回数を示す日本代表キャップは38。1989年にオ大に留学。90年にオ大とケンブリッジ大の短期戦に左プロップで出場し、出場者のみに与えられる“ブルー”の称号を日本人で初めて得た。
 英国最古の定期戦が昨年、120回を迎えたことを記念し、ベスト15が決定。19世紀の選手が三人含まれるなど、対象期間は長い。87年の第1回ワールドカップを制したニュージーランド代表のデビッド・カーク主将はオ大に留学んていたが、選から漏れた。林さんはそうした実績以上に、記憶に残る「人間味」によって、歴代のスター選手を抑え、各誉ある15人に名を連ねた。
 90年12月11日、定期戦前のロッカールームで感極まった林さんは涙を流し、チームメートに抱きついた。オ大の圧倒的不利が予想される中、“極東”からただ一人乗り込んだ男が士気を高め、勝利に導いた。
 「僕の持つ感性が、彼らを共感の渦に巻き込んだ」と林さん。試合開始直後、古傷の左ひざを脱きゅうしたが、戦列に復帰。神戸製鋼でも活躍したイーガン主将に「マルの涙でみんなが一つになれた」と感謝された。
 「知らなかった。うれしい」とベスト15選出を喜ぶ林さん。6年前に現役引退後、現在は神鋼ヒューマン・クリエイトに勤務。社員研修などで、心の触れ合いを呼び覚ます「感性フォーラム」を手掛ける。「教育とは心に火を付けること。全国を縦断し、人生を語り合う“ラグビー寺子屋”のようなことがしたい」。世界に感動を与えた名プレーヤーの夢は膨らむ。


このページの記事は神戸新聞2002年2月17日付朝刊に掲載されたものです。
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